
接客業って、ひとりぼっちじゃないですか?
とくに、夜のお仕事の女の子は。
派手な世界だと思われていることもあるし、そりゃあ接客業なので現場にはいつもお客さんがいて、ワイワイしているかもしれない。でも、やってることってけっこう個人作業です。
売っているものは決まっているはずなのに、お客さんが求めてくるものはどこまでも広く大きく果てしなく無限大。もし困った人がやってきて困った流れになってしまったとき、とりあえずその場では、自分ひとりでなんとかしなくてはなりません。そこにお客さんがいる限り、状況を整理して誰かに助言を求めることも、相談して団結することもできない。ひとりぼっちのとっさの判断、その連続です。
困った流れ、ちょいちょい起こるのにさ……。
そういう性質の仕事なんだから、せめていっぱい話をして、情報交換ができたらいいんだけど、それもなかなか簡単じゃない。ゆっくり話ができるほど同じ店の子と仲良くなることってそうはないし、私生活で仕事の話をすることはもっとむずかしい。
あたりまえだけど、同じ仕事をしているからって考え方は同じじゃないし、似たような人生を歩んでいるわけでも全然ありません。なぜか世の中からひとくくりに扱われることもあるけれど、わたしたちは個人です。実際に顔を合わせたら話が合うかわからないし、友だちになれるかもわからない。絶対なれない!って思うことも、まあある。めちゃくちゃに揉めたりもあります。
でもその上で、「同業の人がいやな目にあわされないといいな」って、なんか、漠然と思ってるんだよね。世界中の同業の人たちのこと、ぼんやりと思う。
成人向けの接客業、とくに女性であることを生かしたものにはいろんな意見があって、働いている本人ですらどう考えていいか分からないこと、価値観が揺れ動くことがたくさんあったりします。ときどきびっくりするほど世の中が失礼だったりもします。ニュースやSNSを見て、社会全体、ときには国からすらも、漠然としかし揺るぎなく見下されていることを実感する日もあります。でも誰になんと言われても、きょう仕事に行かなきゃいけない。だったら少しでも安全で、筋の通った世界になってもらわなきゃ困る。
わたしひとりの経験には限りがあるけれど、それでも書いて残すことで誰かのなにかの役に立つことがあるかもしれない……と思って、2015年に思ってることをだらだら話す系ブログを書き始めました。その後予想通りにだんだん更新しなくなり休眠していましたが、2019年に突然復活しました。この先も思いやられますが、がんばります。
一瞬の共感と一瞬の連帯で、それぞれの足で歩いていきましょう。会ったこともない誰かにわたしたちが抱き続ける「おつかれ!」が、誰にもつぶされずに続いていきますように。
読んでくれる方へ
わたしたちが身を守るために有用な豆知識やハッタリや気休めやおまじないなどを発信、共有、または鼻で笑うなどしたい所存ですが、働いてる当事者じゃない人たちのあいだに広く知られることについての戸惑いを作者として常に持っています。
つまり、残念だけど確実に混ざるであろう来てほしくない人——「風俗嬢が憎たらしい人」「憎くはないけど傷つけておもちゃにしていいと思ってる人」「憎いとかの問題じゃなく単に悪だから罰を受けるべきと思ってる人」「どんな方法でもいいから客として最大限のイイ思いをしたいだけの人」などなどに見つかって逆手に取られてしまうことを想像するととても怖いからです。心から恐ろしいのです。
「興味本位100%です」「よくわからないけど何だかそういうのおもしろそうで」という人が来てくれることには、ちょっと緊張はしますが、でも、真剣に読んでくれるのならゆっくりしていってね、と言いたい。そしてどうか、どうか「来てほしくない人」に変わらないでください。お願いします。
女性でないセックスワーカーのことももちろん大切な仲間だと思ってる。心の中に、確かにいます。ただ、この社会で「女の子」として扱われることから生まれるいろんなことがわたしにもたらす影響はとても大きく、それを語りたい機会も多く、わたし自身から切り離せませんし、何より、シスジェンダー女性のこと以外をあまりにも知りません。なのでこのサイトはひとまずのところ、女の子と扱われる人のために、どこかにいる女の子のことを考えながら、女の子と呼ばれるわたしが作っています(この業界では何歳になっても『女の子』と呼ばれますよ)。読んでくれてとてもうれしい。よろしくお願いします。
書いている人
椎名こゆり
めったに更新されない個人サイト
good night, sweetie
業種:いろいろやって今はデリバリー系。回転少ないゆるふわ店
勤務時間:深夜〜早朝
キャリア:ホテルアイビスや赤坂プリンスで仕事をしたことがある(昔のことなので客の前では知らないふりをする)建て替え前の秋葉原ワシントンで仕事をしたことがある気がする(昔のことすぎて自分でも本当にあれがそうだったのか自信がない)
自信のあるスキル/客の鼻毛が出ていても気にならない精神力
おもな外見のスペック(営業上のキャラクターに左右される話や、コスメの話などの参考になれば)
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パーソナルカラー:ビビッド〜ブライトスプリング(ナポリタン色のコスメを買いがち)
パーソナルデザイン:ガーリッシュ、サブアバンギャルド(サルートが似合わなくて笑う)
骨格診断:めっちゃウェーブ、末端のみナチュラル(他撮りの自分の手が大きくてびびる)
顔タイプ:アクティブキュートとフェミニンのあいだ
当店でいちばん小柄な子、になりがち
いいところ:比較的相手を緊張させにくいはず
よくないところ:ダメな客にはとことんなめられる、そりゃあもう骨の髄まで
店からつけられがちな売り文句:
スレンダーな癒し系(胸とかないけど雰囲気だけでなんとかしまーすヘラヘラ という意味)(実際そう)
出がちなコスプレ:
20代はブレザーとロリータメイド服
30代はバニーガールとクラシックメイド服
やったことある業種:
箱ヘル、箱イメクラ、回春(抜きあり)エステ、M性感は体入だけ、オナクラ、ホテヘル、デリヘル、DC(って今もうあんまり言わないね、当時は本デリをそう言ってた)
箱とホテヘルはだいたい池袋、新宿、渋谷 五反田と錦糸町が少し
勤めていた店が摘発された回数:2 もう増えないでほしい